05館長の朗読日記 406
館長の朗読日記 406 (戦後64年12月31日 新規)
○今日は大晦日である
今日はとうとう大晦日となった。今年、戦後64年の最後の日である。明日からは戦後65年となる。
この戦後64年は、実に、あっという間に過ぎ去ってしまった。近年は本当に一年が短くなった。
しかし、短くなった、短くなった、と言っても、必ずしも何にもしなかったわけではないし、何も出来なかったわけでもない。如何に短く感じられようとも、一応、一年間はコツコツと生きてきたのである。
そこで、この一年最後の日に、戦後64年に私の周りで起こっためぼしい出来事や忘れがたい出来事を振りかえってみた。
○朗読レッスン
私の朗読活動の軸は、6つの地域の9つの朗読サークルに対する朗読レッスンである。しかし、これはあらかじめ定めたカリキュラムに基づいて月2回行なっているものだから、この一年に限って何か特別の出来事が起こることはない。
ただ、一つ、特記事項を上げるとするならば、それは、この9月に八千代朗読サークル「新・みちの会」が朗読ステップ6を修了し、いよいよ10月から第Ⅱ期の朗読レッスンをスタートさせた、ということくらいであろうか。これから、この第Ⅱ期の朗読レッスンをどのように進めていくか。これは「感動をつくる朗読」にとって、非常に重要なことだと考えている。何とか充実したものにしていきたい、と考えている。
○朗読会
朗読レッスンの一環として、各朗読ステップの修了時に、おさらい会(朗読ステップ1~2の修了時)あるいは朗読発表会(朗読ステップ3~6の修了時)を開催している。それに加えて、昨年から、私が主演する2つの朗読会「東百道の朗読館」「東百道・講演と朗読の会」をスタートさせた。
今年一年間のそれらを、開催順に列挙してみる。
2月26日(木)朗読発表会『白旗の少女』/千葉「わかば」
3月25日(水)朗読発表会『戦火と死の島に生きる』/八千代「花ことば」
4月30日(木)朗読発表会『戦火と死の島に生きる』/船橋「はなみずき」
5月16日(土)朗読発表会『ひめゆりの少女』/八千代「こちの会」
5月19日(火)朗読発表会『ホタル帰る』/品川「あやの会」
6月17日(水)朗読発表会『ヴィヨンの妻』/三鷹「さつきの会」
6月28日(日)「東百道の朗読館」/「東百道の朗読館」実行委員会
7月19日(日)おさらい会「『花咲き山』ファンタジー」/習志野「茜」
9月12日(土)朗読発表会『赤ひげ診療譚』/八千代「新・みちの会」
11月01日(日)朗読発表会『恩讐の彼方に』/千葉「風」
12月09日(水)「東百道・講演と朗読の会」/感動をつくる・日本朗読館
改めて数えてみると、全部で11回となる。だいたい月1回の割合で開催したと言って良いであろう。
おさらい会は原則非公開であるが、他の朗読会はどれも観客数が150名前後の本格的な朗読公演である。総観客動員数は、延で約1500名という勘定になる。
このように数え上げていくと、これはなかなか大したものではないか、と改めて思う。
今年は、その他に、各朗読サークルが、以下のように自主自発的な朗読会を開催し始めた。
・10月04日(日)八千代台公民館まつり・演技部発表会に八千代「新・みちの会」が出演(演目:「トキ」)
・10月18日(日)地域交流セミナー「朗読の楽しみ」を千葉「わかば」が開催
・11月28日(土)「品川朗読交流会」Vol.1を品川「あやの会」が開催(品川地域の他の2つの朗読グループ「こだま」「朗読塾LIVE」と共に、3つのグループで共催)
このように、各朗読サークルが自主自発的な朗読会を開催していくことは、私の永年の夢であり、望んでいたイメージであった。そういう試みが、徐々にではあるが、今年から始まったことは、本当に心嬉しかった。
○朗読研究
単に朗読レッスンをする、単に朗読会を開催する、ということだけではなく、孜々として朗読研究を進めていく、ということが私の朗読活動の大切な目標であり、内容である。
ただし、この朗読研究というものは、なかなか具体的な成果としては表に出てこない。昨年(戦後63年/西暦2008年)の3月に単行本『朗読の理論』(木鶏社)を出版した以外は、おりおりにブログ「感動をつくる・日本朗読館」に書き込むくらいのものである。特に、この一年は、朗読研究そのものの表に出た成果に関しては、さしたる特記事項はない、と言ってよい。
ただし、単行本『朗読の理論』(木鶏社)に関する反響はいろいろと出てきている。特に、本の出版から1年ほど経った今年の3月頃から、急にそういう反響が顕在化してきたような気がする。
先ず、2月頃に、立命館大学の入学試験(国語問題)に拙著『朗読の理論』の文章が出題される、という事件(?)が起こった。立命館大学の入学試験事務担当から、事後承諾の連絡があったので、初めて知ったのである。
次に、2月末~3月初にかけて、大阪地域で演劇活動(役者)と朗読活動(実演&演出)をしている斎藤誠氏から電話で拙著『朗読の理論』購入について問い合わせがあり、その後、ファックスで丁寧な読後感が送信されてきた。斎藤誠氏は、私の紹介によって木鶏社から直接『朗読の理論』を購入し、購読後とても高く評価してくださった。その上、知人友人の方々に広く本書を推奨してくださっている。斎藤誠氏は『演劇会議』という演劇関係の雑誌の編集者もしている方であるという。
さらに、3月20日付発行の朗読専門誌『音声表現』2009春・第5号に、拙著『朗読の理論』に対する書評が載った。私がこの事実を知って書評を読んだのは11月になってからであったが、その書評も拙著『朗読の理論』の内容をとても高く評価してくれていた。
そして、この秋ごろから、拙著『朗読の理論』を読んだ上で、朗読レッスンを受けたいと、朗読サークルへ入会を申し込んでくる方々がポツポツ出てきた。これも、私の永年の夢であり、望んでいたイメージであった。たとえ、ポツポツではあっても、こういう形でサークル会員が増えていくことは、本当に心嬉しい。
また、ブログ「感動をつくる・日本朗読館」についても、少しづつ具体的な反響が出てきた。
一つだけ特記すれば、10月頃、永年朗読活動をしておられる渡辺知明氏から、私が提唱する「高く(上に)出る」語り口についてコメントが寄せられた。次いで、渡辺知明氏のブログ『eXcite ことば・言葉・コトバ』に、それについて「朗読と文のイントネーションの原理」という文章を2回にわたって掲載した旨の案内が、同じくコメントで寄せられた。
それが皮切りとなって、私が、ブログ「感動をつくる・日本朗読館」の「館長の『朗読の理論』」欄に「渡辺知明さんのイントネーション論について」という文章を7回にわたって掲載した。
その後、渡辺知明さんからは特に応答はないが、今後も機会があれば、建設的な相互応答、相互啓発を行なっていきたいと思っている。
○訃報
この年末に、私が朗読指導している朗読サークルの会員から何通かの訃報をいただいた。心から哀悼の意を表したい。
特記すべきは、8月2日に三鷹朗読サークル「さつきの会」の代表であった本田悠美子さん逝去されたことである。朗読サークルの会員ご本人が亡くなったのは、初めてである。
本田悠美子さんとは戦後63年(2008年)2月に「小さな朗読館・山桜」を共催し、共演した。前年の8月に、白血病であることが分かってから、約半年後のことである。
白血病であることが分かった戦後62年(2007年)8月から、亡くなった戦後64年(2009年)8月までの、約2年にわたる闘病生活の間、本田悠美子さんから何通ものお手紙やお葉書をいただいた。それぞれが皆、本田悠美子さんの心のこもったお便りであった。
朗読が、本田悠美子さんの闘病生活を支える大きな柱の一つであった。その一環として、戦後63年(2008年)2月に「小さな朗読館・山桜」を共催し、共演したのであった。その間の一部始終を、今でも私は鮮明に覚えている。
本番当日は、関東地方に珍しい大雪の日であった。その大雪の中を、会場がいっぱいになるほど大勢の観客が聴きに来て下さった。その観客の一人一人に対する感謝の気持が、今でも鮮やかに蘇ってくる。
朗読を通して知り合った方々から訃報をいただくのは悲しいけれども、その悲しさは、逆に、朗読をやっていて良かった、という想いにもつながっていく。朗読レッスンを始めて良かった。朗読会を開催してきて良かった。朗読研究を継続していて良かった。そのように思うのである。
○年月に対する感覚
このように、改めて振り返ってみると、この一年も、けっこういろいろな出来事があった。
そして、このようにこの一年を振り返ってみると、近年、年月に対する感覚がかなり変化してきていることに気づかされた。
これを一言でいうと、これから来る年月が短く間近くに感じられ、すでに過ぎ去った年月が長く遠くに感じられる、という感覚である。これから来る年月は、あたかも望遠鏡で覗いた風景のように、間近く拡大して生々しく感じられる。逆に、すでに過ぎ去った年月は、その望遠鏡を逆さまにして覗いた風景のように、遠くに小さく霞んで感じられる。
これは、私だけでなく、年齢を重ねた人間に共通した感覚のようである。朗読サークルの会員たちに、私が、今年の朗読発表会のことを「去年の朗読発表会では、こうしましたが、云々」と間違って表現しても、また、来年の朗読発表会のことを「今年の朗読発表会には、こうしたいですね、云々」と間違って表現しても、さほど違和感なく受け取られる。間違いに気づいて訂正すると、皆さんも、私と似たような感覚を持っている、ということであった。
○どうぞ良いお年をお迎え下さい
年齢を重ねていくと、かように年月に対する感覚が変わってくる。したがって、来年の一年間もきっと短く、あっという間に過ぎてしまうに違いない。
さりながら、その中でコツコツと頑張って、その短く感じられる一年間を、少しでも充実した年にしていきたいものである。
それでは、皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。
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