05館長の朗読日記 162
館長の朗読日記 162 (戦後63年6月13日 新規)
○千葉「わかば」の朗読レッスン
昨日の午後1時半から、千葉「わかば」の朗読レッスンを行なった。
今回から芥川龍之介原作『トロッコ』に入る。どのグループの場合でもそうだが、この『トロッコ』のレッスンに入ると、このグループもとうとうここまで来たか、という一種の感慨が胸中を去来する。
私は、レッスン教材を選択するとき、その一つ一つに指導上の狙いを込めているので、どの教材も一つとしてゆるがせにできない大切なものと認識している。しかし、この『トロッコ』は、その中でも特に重要な位置を占めている。したがって、この『トロッコ』を解説するときは、うまく解説できるかどうか、いつも緊張するのである。
今回は、初回ということで、本来は前半部分のみを解説する予定にしているのだが、前半の解説に勢いがついていたのと、時間がかなり余っていたこともあって、思い切って一気に後半の解説もやってしまった。一つには、この『トロッコ』に関する私の解説は、拙著『朗読の理論』の中でもかなり丁寧に展開してあるので、多くの会員はその部分を読んでいるのではないか、と考えたこともある。そういう場合には、本筋だけでも、一気に一通り解説してしまった方が良いのではないかと考えたのである。細かいところは、後で補足すればよい。
約2時間におよぶ解説だから、果たしてどのくらい理解してもらえたか、果たしてどのくらい納得してもらえたか、いささか気になるところではある。まあ、レッスンはあと五回あるから、会員たちの様子を見ながら対処していくことにしよう。
○八千代「花ことば」の朗読レッスン
昨日の午後6時から、八千代「花ことば」の朗読レッスンを行った。
今回は、山本周五郎原作『夕靄の中』の最後の3分の1の部分の朗読練習である。一人一人に約1ページづつ朗読してもらい、それについてダメだしをしつつ、その部分に関する解説の補足を行なっていく。
特に、今は朗読ステップ4の段階であるから、「演出者の立場」から朗読表現を修練していくことがテーマである。登場人物がこのセリフを表現するときの視点と心情はどのようなものとして捉えらるべきか、また、そのセリフを受けた相手の登場人物はそれに対してどのような視点と心情によって次のセリフを表現したと考えるべきなのか。また、それらのセリフの間に挿入された地の文を、原作者(=朗読者本人)はどのような視点と心情に基づいて表現すべきなのか。それらを、その場面イメージを構成するものとして、「演出者の立場」から考え、選択し、表現していくのである。
会員たちは、しきりに、私の補足的な解説内容を面白がっているようだったが、それでは困るのである。私は私なりの「演出者の立場」から、いわば勝手に解釈しているのであり、それは決して唯一絶対のものではない。会員一人一人が自ら「演出者の立場」に立って、自分なりの解釈を考え、選択して、自分なりの場面イメージ(=作品世界)を構成しなければならない。
朗読ステップ4は、そういう朗読者の想像力や創造力を涵養すべき段階なのである。
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