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05館長の朗読日記 212

館長の朗読日記 212  (戦後63年10月17日 新規)

○船橋「はなみずき」の朗読レッスン
 昨日の午後には、船橋朗読サークル「はなみずき」の朗読レッスンを行なった。
 今回は、芥川龍之介原作『トロッコ』の仕上げの通し読みである。
 皆の通し読みを聴いて、非常に印象的だったのは、朗読するときの声に力がこもって安定してきたことである。これは、皆が、自分の声で朗読できるようになってきた証拠である。
 これまで、いろいろなグループで朗読ステップ3の修了を記念した朗読発表会を行なってきたが、観客が異口同音に言ったのは、出演者の声が皆そろってとても良かった、という感想であった。別に、声そのものが綺麗な会員がそろっていたわけではない。ただ、力のこもった、しっかりした声出しができていた、というにすぎない。
 船橋朗読サークル「はなみずき」の皆さんの声出しも、今回、そのように聴こえたということは、この時期、つまり、レッスンを始めてから2年半くらい経った時点で、だいたい朗読の場で自分本来の声出しができてくる、ということなのかも知れない。
 声出しだけでなく、語り口の方も、かなり滑らかになってきた。自分本来の声出しと、自分本来の語り口は、深く関連しているから、これは当然のことであろう。
 私が指導する朗読レッスンは、いわゆる発声練習なるものを一切やらない。一般的に行なわれている、いわゆる発声練習なるものの効用を、わたしがほとんど信じていないからである。また、朗読レッスンの貴重な時間を、そんなものに費やすくらいなら、台本の解釈の仕方や朗読表現の仕方をキチンと指導した方が、よっぽどマシだと信じているからでもある。
 また、いわゆる発声練習などを一切しないでも、一定のレッスンを積めば、観客から、出演者の声が皆そろってとても良かった、という感想をいただけるくらいの声出しが出来るようになってくるのである。
 ただし、朗読ステップ3の本テーマである、地の文を朗読する際の視点と心情の転換は、全体的にはまだまだの段階であった。まあ、理解することと、それを実行することとの間には、かなりのタイム・ラグ(時間差)があるから、これは仕方がないと思っている。

 
○習志野「茜」の朗読レッスン
 昨日の夜間には、習志野朗読サークル「茜」の朗読レッスンを行なった。
 今回は、宮沢賢治原作の『やまなし』と『蟻ときのこ』の全体練習である。
 今回の全体練習で印象的だったのは、会員の皆さんのセリフ表現が目立って上達してきたことである。それだけに、地の文の表現との差が耳についた。地の文を、朗読者自身のセリフとして、語りかけるように表現することは、格段にむずかしいようである。
 今回は、音声言語の直接表現について、次のことを改めて説明した。すなわち、音声言語は表現主体の心情を直接表現できるだけでなく、表現すべき対象の形象をもある程度は直接表現できる、ということを改めてキチンと説明した。
 表現対象の遠近、大きさ、方向(上にあるのか下にあるのか、前後左右のどこにあるのか)など、その空間的な形状や位置を、音声言語の表現の仕方で、ある程度は直接表現することができる。さらに、表現主体や表現対象の動きや状態(表情や態度)なども、かなりの程度、直接表現できるのである。
 もちろん、そういう形象を直接表現するためには、その前提として、その形象をありありとイメージしなければならない。これは、朗読ステップ1の本テーマでもある。そこで、今回は、特にこの形象をイメージすることと、そのイメージした形象を音声言語で直接表現することとを、からめた朗読指導を試みた。
 実際にそういう朗読指導を試みたところ、かなり効果があることが分かった。
 先ず、一回、朗読してもらう。次に、その場の表現対象の形象を説明して、改めてその形象をイメージしてもらう。そして、そのイメージをその会員の日常会話の表現力で朗読表現するように指導してから、再度、朗読してもらう。
 すると、この二度目の朗読表現においては、一回目に比べて格段にその形象の直接表現が良くなっているのである。
 そればかりではなく、自然に高く上に出るような語り口にもなってくる。特に、2音目を高く上げる語り口が自然に出来てくる。つまり、朗読ステップ1のもう一つの本テーマである、高く上に出る語り口も出来てくるのである。
 これには、私も内心で驚いたが、改めて考えてみれば、これは当然のことでもある。日常会話で、形象を直接表現するためには、無意識ながら、高く上に出るような語り口、特に、2音目を高く上げる語り口、で人間は表現しているからである。
 指導の仕方で、かなり効果が上がってくる事実を、今回、改めて痛感した。そして、指導者の責任が重いことも。

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