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05館長の朗読日記 248

館長の朗読日記 248  (戦後63年12月27日 新規)

○黒澤明没後10周年記念番組
 NHKのBS2で、黒澤明没後10周年記念として、黒澤明が監督した映画全30作を放映する番組が今年の初めから断続的に組まれていた。私の家では、今年の途中からようやくNHKのBS1とBS2が観れるようになったので、この番組も途中からしか視聴できなかった。
 それでも、「悪い奴ほどよく眠る」「七人の侍」「天国と地獄」「赤ひげ」「夢」「まあだだよ」などを、改めてジックリと鑑賞することができた。
 私は黒澤明が監督した映画が好きで、高校生時代から、封切りを楽しみにして映画館に観に行ったものだ。しかし、「影武者」においてオーディションで登用した素人のセリフが、あまりに下手くそだったので、まず最初にがっかりした。その次の「乱」でも、一部の役者のセリフがキャーキャーと耳障りだったことと、画面作りの一部があまりに作り物的であったことなどにがっかりして、それ以降は映画館にまでは観に行かなくなったように記憶している。
 今回の番組においても「影武者」や「乱」は観なかった。しかし「夢」「まあだだよ」はじっくりと観た。「夢」「まあだだよ」は予想していたよりは良かった。しかし、何かしら黒澤明の独善的なところが目立っていたような気もした。

○黒澤明のシナリオ観や演技観は面白かった
 この記念番組は、黒澤明が監督した映画全30作を放映するだけでなく、彼のインタビューや、シンポジウムにおける若者との質疑応答、撮影現場における演技指導なども、いろいろと組み合わせて放送していた。
 こちらの方は、掛け値なしに面白かった。
 映画ではシナリオが大事だ、という考え方もさることながら、一流の監督は必ず自分でシナリオを書いている、という話しは面白かった。たとえ、別に脚本家がいて、形式的にはその人がシナリオを書いたことになっている場合でも、一流の監督は、そのシナリオを制作する過程で、そのシナリオの隅々にまで深く関わっているのが実態だ、ということであった。そうか、そうだろうな、と心から納得できた。
 また、彼の親しかったある監督が、彼のシナリオのある場面で「彼は部屋の中で何かしている」と書いていた、という逸話も面白かった。他人が読んだら「何かしている」じゃあ何が何だか分からないだろうが、書いた本人の頭の中にはその場面のイメージがはっきり出来ているんだよ。ただ、書くのが面倒くさいから「何かしている」としか書かなかったんだ、という話しであった。これは、シナリオと映画表現との関係だけのことではない。文学作品の文字言語と、朗読表現における音声言語の関係についても、大いに参考になる話である。
 また、「八月の狂詩曲」の撮影現場で、主演の村瀬幸子に演技指導しているドキュメンタリーも面白かった。村瀬幸子のいかにも新劇系の俳優らしい演技を、一所懸命、自然な演技に矯正しようとしていた。さんざ指導した挙句、自分の席に戻りながら、「(下手に)演技しようとするからダメなんだよ」とはき捨てるように独り言を言っていたが、朗読のことを思い出して、私は思わず笑ってしまった。

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