« 館長の朗読日記1437/八千代「新・みちの会」の朗読レッスン | トップページ | 館長の朗読日記1439/品川「あやの会」の朗読レッスン »

館長の朗読日記1438/朗読漫画『花もて語れ』の第106話

館長の朗読日記1438  (戦後69年06月17日 新規)



○朗読漫画『花もて語れ』の第106話(1)

 昨日(6月16日)小学館から『週刊スピリッツ』2014年29号が届いた。本号には朗読漫画『花もて語れ』の第106話「蜜柑④」が掲載されている。この第106話も主人公・佐倉ハナによる芥川龍之介原作「蜜柑」のステージ朗読の模様が描かれている。トンネル内で田舎者の小娘が窓を開けるという場面が中心である。

 この場面では、トンネル内で小娘が窓を開けたために、汽車の黒煙がその窓から室内になだれ込んできたために、鬱々とした気分でいた芥川龍之介が「ハンケチを顔に当てる暇さえなく、この煙を満面に浴びせられたおかげで、ほとんど息もつけないほど咳きこまなければならなかった」という目に合う。芥川本人は大変であった。

 しかし、客観的には、ちょっとユーモラスな場面でもある。それまでの芥川龍之介が鬱々とした気分であればあった分だけ、また、小娘のために不意打ちを受けて咳きこめば咳きこんだ分だけ、客観的にはおかしさがこみ上げてくる。その場面のユーモラスな雰囲気が、今回の第106話「蜜柑④」ではよく表現されているようだ。



○朗読漫画『花もて語れ』の第106話(2)

 そして、この作品の最大の山場に向かう場面、つまり、汽車が三人の男の子の待つ踏切の方に近づいていく場面も大変に的確に描かれている。汽車がトンネルを出た段階で、視点が一旦は現在に転換され、ついで、その瞬間の過去に再転換されるのだが、そこで時間的には「リプレー」的な遡りを行なった点もよく表現されている。

 漫画的には、当時の二等客車の内部、大正時代の横須賀駅の玄関、汽車の窓の構造、車窓から見える横須賀線沿線の当時の風景、家並や踏切番小屋や白旗を運転手に向けて示す(振る)様子などが、綿密な資料調査や現地調査に基づいて描かれている。資料調査の安井洋子さん、現地調査の高島雅さんは、本当に大変だったと思う。

 特に、トンネルから出た汽車が踏切に向かっているところを鳥瞰図として描いているが、このトンネルと踏切がどの位置であるかを特定するために、高島雅さんは大変な調査をしたそうだ。当時の地図や周辺の交通事情を調べた上に、現在の横須賀駅と逗子駅の間の横須賀線を何回も何回も列車で往復し、現地調査を重ねたという。



○朗読漫画『花もて語れ』の第106話(3)

 芥川龍之介のこの「蜜柑」という作品は、文学好きや鉄道マニアの好奇心を刺激するらしく、けっこういろいろと調査や研究がなされており、その成果が論文などに記載されている。この作品で、小娘が蜜柑を投げた踏切の位置も、いろいろの説が出されている。しかし、そのどれも必ずしも納得できるものではなかったのである。

 今回の、この朗読漫画『花もて語れ』の「蜜柑」篇のために改めて行なわれた現地調査とその成果によって、新たにいろいろと分かったことがある。特に、小娘が蜜柑を投げた踏切の位置について、新たな案(新説)が提出された。この新説は、私には十分に納得できるものであった。その意味で、文学研究的な価値があると思う。

 この漫画の連載誌でもよいし、単行本でもよいから、今回のいろいろな資料調査や現地調査の成果をまとめて記載して欲しいと思っている。少なくとも、小娘が蜜柑を投げた踏切の位置に関する新説を、その概要でもよいから、キチンとまとめて記載して欲しいと思っている。そうすれば、この漫画のファンも喜ぶのではないか。





|

« 館長の朗読日記1437/八千代「新・みちの会」の朗読レッスン | トップページ | 館長の朗読日記1439/品川「あやの会」の朗読レッスン »

05館長の朗読日記(戦後69年/西暦2014年)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 館長の朗読日記1437/八千代「新・みちの会」の朗読レッスン | トップページ | 館長の朗読日記1439/品川「あやの会」の朗読レッスン »