08館長の「朗読の理論」 15
『朗読の理論』に対する反響(その3) (戦後64年12月17日 新規)
『音声表現』2009春・第5号の書評
《館長の前段のコメント》
多分、今年(戦後64年/2009年)の11月になってからのことだったと思うが、ある日、何気なくインターネットであちこちとサイトのページを見て廻っていたところ、国立国会図書館のホームページで収納雑誌の記事内容を紹介しているところに行き当たった。そこで、初めて、拙著『朗読の理論』に対する書評が、雑誌『音声表現~ゆたかな朗読を求めて~』の2009年春・第5号に掲載されていることを知ったのである。
この『音声表現~ゆたかな朗読を求めて~』は、年2回の発行で、発行部数は1000部という。それ自体がマイナーな朗読のことを専門に扱っているにしては、決してマイナーとはいえない雑誌である。
私も、この『音声表現』という雑誌のことを、まったく知らなかったわけではない。しかし、これまで全く無縁であったし、読んだことはおろか、手にしたこともなかった。また、この雑誌を編集・制作している「東海・音声表現研究会」という団体が、どのような人たちで組織されたものか、ということも全く知らなかった。
当然、すでに3月に発行されていた『音声表現』第5号に、拙著『朗読の理論』が書評されていることなどは、全く知らなかった。書評が出てから、半年以上も過ぎた11月になって、遅まきながらようやくそれに気がついたというわけである。
ちょっと奇妙な気もするが、書評などというものは、案外こうしたものかも知れない。ともあれ、さっそく購入して読んでみた。
書評をしている代永克彦(よなが・かつひこ)氏は、私にとっては全く未知の人である。プロフィールによると、代永克彦氏は、朗読者であり、また、朗読指導者でもあるようだが、私の『朗読の理論』をかなり的確に、そして、かなり好意的に読んでくれているようである。私は、いささか意外に感じると共に、正直いってかなり嬉しかった。
書評文はそれほど長くないので、以下に全文を引用する。
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朗読本を観る(5)
~「読み」を楽しみ学ぶ皆さんのご参考に~
◇代永 克彦
『朗読の理論 感動をつくる朗読をめざして』
東 百道・著 木鶏社(二〇〇八年)
この本は、文字通り「朗読とは何か」を理論的に追求した本である。ややとっつきにくいかと思って読み始めたが、朗読者として、またいくらかでも朗読指導に携わる者としてぜひとも理解しておきたい根源的な認識と方法論に接して、ぐんぐん引き込まれてしまう圧巻の書であった。
著者の東百道氏は、一九四六年生まれ、会社勤務のかたわら、認識論・表現論・言語論・文学論・技術上達論の独学を踏まえて、一九八〇年代から実際に朗読を学び、本格的に朗読の実技・理論・指導法を研究し、現在では、千葉県・東京都内で十か所近い朗読サークルを指導中という、いわば「異色」の朗読研究者・朗読指導者である。
「まえがき」で筆者は、アナウンスや演技の練習メニューの延長のような朗読法でなく、放送や演劇とは違う朗読自体の本質と上達のステップに関する理論と実践の研究成果を示したいと述べている。
本書の構成を通じて内容のポイントを見てみたい。
第一章では、「朗読とは文字言語で表現された作品を音声言語で再表現する芸術」という基本的理解について、演劇や音楽と比較しながら考察している。
第二章では、朗読が成立するプロセスについて、朗読者が作品をイメージとして認識する段階から、それを現実に音声で表現していく段階、聴き手がその作品世界をイメージとして認識していく段階へと、順を追ってそれぞれ構造的に分析し、朗読は朗読者のイメージに始まり聴き手のイメージに終わることを解明している。
第三章では、作品に描かれた世界をイメージとして認識するための読み込み方を実際の文学作品で詳しく分析していくのだが、特に芥川の『トロッコ』と一葉の『わかれ道』の文学的解釈は非常に深く、その解釈が読みに反映されていく仕組みもわかって、朗読では解釈力・理解力が極めて重要だということを改めて感じさせられる。
第四章で、いよいよ実際に朗読表現をしていく方法が説明される。「自然な語り口」にするには、セリフなら人物の心情に同化し、地の文なら作者の意図を読み取って、書かれているいわば「他人事」を「我が事」として、自分の言葉として言えることが必要と筆者は語る。さらに、「朗読上達の六段階」という目標設定とふさわしい作品、聴き手との「協働」による「感動をつくる朗読」とは何かの考察、賢治の『セロ弾きのゴーシュ』を題材にした上達論など、紹介しきれないほどの質量と密度がある。
この上は、この理論が音声にどう生かされるのか、CD付きの続編が期待される。
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《館長の後段のコメント》
書評者の代永克彦氏は、この『音声表現』の編集者でもあるらしい。この書評欄の最後に代永克彦氏のプロフィールが次のように載っている。
「(よなが かつひこ) 東海学園大学・中日本自動車短大非常勤講師。元名古屋市立高校国語科教諭。現在も同市立菊里高校放送部外部講師としてアナウンス・朗読を指導・愛知東邦学園コミュニティカレッジ朗読講座担当」
私は、寡聞にして、代永克彦氏のことについて、このプロフィール以外のことを何も知らない。このプロフィールを読む限り、永年、朗読の指導にかかわってきた人のように思われる。実際に朗読指導をしている人に、このようにキチンと読んでもらった上に、このように高く評価してもらったことを、私は大変に嬉しく思っている。
ただし、書評の最後に「CD付きの続編が期待される」と記されてあるが、このご期待には残念ながら添えそうもない。たしかに、今、続編『朗読の上達法』(仮題)を執筆&出版することを計画しているが、その本にCDを付ける考えはない。
なぜならば、CDを付けると、本の表紙が硬直して、本として気持ち良く扱うことができないからである。現に、今回書評を載せてくれた『音声表現』の裏表紙にもCDが付いているのだが、そのためにその裏表紙が硬直していて、とても読みにくい。
私も、いずれ機会があれば、自分の朗読実演や朗読指導に関するCDを制作&発行したいと思っている。しかし、その場合には、CDはCDとして、単独で出したいと考えている。単行本や雑誌の付録のような形で出すことは考えていないのである。


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